遺伝子組み換え技術の最新動向サマリー( 2025年8月)

出典:HOBIA NPO法人 北海道バイオ産業振興協会

ハイライト

〇フィリピン、日本、中国におけるゲノム編集バナナの消費者受容度調査が面白い。バナナの傷みやすさは深刻な食品廃棄を招く。この問題がゲノム編集による褐変抑制バナナの開発につながった。アジア3カ国から計1,309名の消費者を対象に、消費意欲と表示にする選好を調査した。

主な調査結果は次の通り:

  • 安全性が最重要。安全と認識した場合、消費意欲が大幅に高まる。この傾向は中国で特に顕著(オッズ比 267.4%増加)、次いで日本(171.2%増加)、フィリピン(95.1%増加)であった。
  • 新食品への恐怖はゲノム編集バナナの購入意欲を低下させる。新食品を試すことに不安を感じる場合、3カ国全てでゲノム編集バナナの摂取意欲が低下した。
  • ゲノム編集バナナの消費には文化的要因が作用する。フィリピンでは文化的信念がバナナ摂取の意思決定に影響し、日本では消費者が好む表示の種類にも影響を与えた。
  • 環境メッセージは回答者によって異なる効果を示した。ゲノム編集バナナの環境的利点について説明すると、日本では摂取意欲が高まったが、中国では逆に意欲が低下した

その他は、以下の通り、

〇ジャガイモの起源の謎を解明し、現代のジャガイモが約900万年前の自然交雑によって誕生したことを発見した。すべてのジャガイモ種がチリ原産のEtuberosumとトマトの両方の遺伝物質を安定かつ均衡よく含有していることが判明し、ジャガイモが両者の古代交雑に起源を持つことを示唆している。Etuberosumとトマトは別種だが、約1400万年前に共通の祖先を共有していた。
〇サツマイモは6組の染色体を持つ六倍体という状態であり、これがDNA解読を極めて困難な課題としてきた。ゲノムの3分の1はエクアドル原産の野生種Ipomoeaaequatoriensis由来であり、別の部分は中央アメリカ原産のIpomoeabatatas4xに類似している。祖先の遺伝的配列が同一染色体上で特異的に絡み合っていることが、この植物の高い適応性と病害抵抗性の要因となっている。
〇世界のコーヒー供給はArabica種(Coffeaarabica)とRobusta種(C.canephora)の2種に依存している。気候変動、気温上昇、予測不能な気象パターンにより、農家がこれらのコーヒーを栽培することがますます困難になり、業界に重大な脅威をもたらしている。新研究によれば、C.libericaとC.dewevreiは、Arabica種やRobusta種が生育困難な高温多湿気候下での栽培に大きな可能性を秘めている。
〇ダイズにおいてこのmiR172a遺伝子を過剰発現させると、種子サイズと重量が著しく減少することを発見した。改変ダイズの100粒重量は対照群の17.01グラムから6.02~9.23グラムの範囲に低下した。タンパク質含有量は増加し、miR172aがダイズ種子表現型および脂肪酸・タンパク質蓄積の調節に重要な役割を果たしていることを示唆している。また、ERF416およびERF413変異体を構築し、ダイズ種子表現型の変化を調査した。変異体は種子サイズが小さく百粒重も低かったが、株当たり収量が最大31.8%増
加するなど著しい収量向上を示した。これらの変異体は脂肪酸含有量、特にオレイン酸(18:1)が増加したが、タンパク質は減少した。miR172a-ERF416/413モジュールが大豆の種子サイズと重量を調節し、異なる経路を通じて脂肪酸含有量を調節する可能性が示された。

植物

  • Clemson University の研究者らがゲノム編集技術で高収量・高品質繊維のワタを開発
  • Heidelberg Universityの研究者がゲノム編集用2種のタンパク質予測AIモデルを開発
  • ジャガイモがトマトから進化したことを発見
  • 食品安全大臣が追加DNAを含まない遺伝子組換え食品の表示規則にFood Standards Australia New Zealand (FSANZ)基準を採用
  • TEXAS A&M UNIVERSITY とウズベキスタン、超低ゴシポールワタの人道的利用に向けた次段階へ提携
  • サツマイモの DNA 解読され、その祖先が明らかになった
  • 国際チームがジャガイモの成長と防御のトレードオフを分析するモデルを開発
  • AI でゲノム編集の精度向上を実現
  • International Rice Research Institute (IRRI)の研究者が旱魃下で収量を向上させるイネ遺伝子変異体を特定した
  • チリ、ゲノム編集による高繊維コムギを承認
  • 専門家がゲノム編集実験の自動化を実現する CRISPR-GPT を導入

食糧

  • クチナシ茶(GARDENIA TEA)の特有の香りを解読
  • Pairwise 社が、カカオ研究開発向けに FULCRUM ® CRISPR プラットフォームを MARS 社にライセンス供与
  • 研究により LIBERICA コーヒーは 3 つの異なる種から成り、気候変動に強い選択肢があることが判明

ゲノム編集に関する特記事項

  • フィリピン、日本、中国におけるゲノム編集バナナの消費者受容度調査
  • CRISPR 技術が紫米開発の鍵を解明
  • ゲノム編集技術がダイズ種子形質を制御する遺伝モジュールの同定に貢献増加

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