遺伝子組み換え技術の最新動向サマリー( 2025年4月)

出典:HOBIA NPO法人 北海道バイオ産業振興協会

ハイライト

Vietnam National University の研究者らが、ゲノム編集を用いてOsNRAMP7 の過剰発現が成功した。温室条件下で生育させたゲノム編集イネ系統において、他の金属取り込みや農業形質に影響を与えることなく、鉄蓄積量が有意に増加したことが確認された。鉄欠乏性貧血のさらなる蔓延と闘う戦略のひとつが、バイオネの開発である。

中国の研究者が実施した研究によると、2つの遺伝子組換え(GM)耐虫性トウモロコシaize、CM 8101とReuifeng 8は、鱗翅目昆虫(Ostrinia furnacalis とHelicoverpa armigera)のストレス下でフモニシン(fumonisin)汚染を軽減した。

オーストラリアのJames Cook University(JCU)の研究者らは、シンガポールにある JCU のトロピカル・フューチャーズ研究所と共同で、養殖ニホンウナギ(ウナギ)を分析した結果、細胞を利用した魚が、アレルギーリスクを大幅に低減した。

Embrapa の研究者たちは、葉酸合成経路を操作することにより、特にシロイヌナズナの GTP-cyclohydrolase I とaminodeoxychorismate 合成酵素のコード配列を発現させることにより、遺伝子組換えレタスを開発した。ビタミン B9 としても知られる葉酸は、いくつかの身体機能において重要な役割を果たす必須栄養素である。葉酸の欠乏は、巨赤芽球性貧血、発育中の胎児の神経管欠損、心血管疾患のリスク増加などの健康問題を引き起こす可能性がある。

中国のYangzhou University の研究者が、イネ由来のSARS-CoV-2 糖タンパク質S1 サブユニットワクチンを開発した。pGt1 プロモーターの制御下で、イネ由来の S1 (rS1)タンパク質が形質転換イネ種子中に産生されていることが確認された。次に、精製したrS1 タンパク質を用いて、ヒトのアンジオテンシン変換酵素2 との相互作用と、異なるアジュバントを用いてマウスに投与したときの免疫原性を評価した。その結果、rS1 は体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を誘導できることが示唆された。

英国の British Sugar が実施した最近の調査によると、69%の英国人が英国農業の持続可能で活発な未来を創造するためのゲノム編集を強く支持している。特に、Z 世代がゲノム編集技術の導入を呼びかけており、なんと80%がこの技術を支持していることが分かった。

米国 University of Maryland の研究者らは、植物における大規模 CRISPR スクリーニングの課題に対応する、包括的なオールインワンCRISPR ツールボックスを開発した。この61 種類の多用途オールインワン・ベクターの完全セットは、一般的に使用される CRISPR 技術のほとんどすべてをカバーしている。これにより、植物の遺伝子をオフにしたり(機能喪失)、オンにしたり(機能獲得)する大規模な研究がより容易になり、作物の改良と植物生物学の理解のための多くのエキサイティングな可能性が開かれる。

植物

  • 鉄欠乏性貧血対策に役立つ鉄強化バイオイネを開発
  • スイスが新しい育種技術(NBT)に関する新法案を発表
  • ソルガムの大きな気候変動への対応力を生み出す新しい技術
  • 中国で2つの耐虫性トウモロコシがフモニシン汚染を軽減
  • インドにおける Bt ワタ採用を支援する政策戦略を専門家が提言
  • 野生近縁種の遺伝子を導入したジャガイモの晩枯病圃場抵抗性
  • パンゲノム(pangenome)からイネの遺伝的多様性、進化、栽培種化が明らかに

食糧

  • 細胞培養魚が魚介類のアレルギーリスクを減少させる
  • 圃場条件下で安定した葉酸バイオ強化化レタス
  • Food Standards Australia New Zealand (FSANZ)がオーストラリアとニュージーランドで販売される初の細胞培養食品を認可

健康

  • 専門家らがコメから Covid-19 ワクチンを開発
  • 遺伝子全体を置き換える新しいゲノム編集ツールを開発

環境

  • 遺伝子組換えのないゲノム編集ポプラの木を開発
  • 農業土壌からの温室効果ガス(GHG)排出を示す長期研究

ゲノム編集に関する特記事項

  • 植物における大規模スクリーニングのためのオールインワン CRISPR ツールボックスを開発
  • Z世代が英国に於けるゲノム編集を強力に支援

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