遺伝子組み換え技術の最新動向サマリー( 2025年10月)

出典:HOBIA NPO法人 北海道バイオ産業振興協会

ハイライト

今月は育種の面で大きな進歩がありました。特にがおおきな進歩と考える件を太字で示しています。

〇GmAP2遺伝子はアルミニウム毒性および低リンストレスに対するダイズの耐性を高めることが判明した。この遺伝子を過剰発現させたところ、生鮮重量、根長、側根数などの生理的指標が改善されることが観察された。

〇土壌の窒素レベルが低いと鮮やかな赤色に変わる遺伝子組換えトマトの栽培に成功した。「RedAlert Living Sensors」と呼ばれるこの改良品種は、園芸家、農家、水耕栽培者がトマトの生育に必要な窒素不足を把握するのに役立つと期待されている。

〇コムギの草丈と粒径の両方を精密に制御する重要な遺伝子ファミリーを特定した。GA1OX1遺伝子の変化は、特に発育中の穀粒内で高いジベレリン濃度の蓄積を引き起こし、より大きく重い穀粒をもたらした。主に穀粒発育に関連する遺伝子が植物全体の草丈に影響を与え得ることを発見し、植物ホルモンが従来考えられていたよりも広範に組織間を移動することを示唆した。

〇ゲノム編集技術を用いて無香性のインディカ米 IR-64 にbasmati米の香りを誘導することに成功したと報告した。香りは、米の重要な特性の一つであり、価格決定の鍵となる要素である。

〇WUSCHEL -D1(WUS-D1)遺伝子が、標準的な単一の雌蕊ではなく、花ごとに3つの雌蕊を発達させる珍しいコムギ品種の原因となる主要因子であることを特定した。各雌蕊がコムギ粒に成熟できるため、この遺伝子を活性化することで、1株あたりのコムギ粒を大幅に増やし、潜在的に総収量を3倍に高める道が開ける。

〇CRISPR-Cas9 による非相同末端接合(NHEJ)技術と全生育段階選抜を組み合わせ、アセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子の変異を導入することで除草剤耐性を持つインディカ米を開発した。この技術により、複数の除草剤クラスに対する広域耐性を付与する三重変異を含む変異を検出。野生型米と比較してイマゼタピル(imazethapyr ; IMT)耐性が1153倍向上するという顕著な結果を示した。さらに圃場試験では、耐性変異体が IMT 処理後も収量に影響を与えずに正常な農学的特性を維持することが確認された。

〇ビタミンDの前駆体であるプロビタミンD3を豊富に蓄積するトマトを開発した。このビタミンDは「sunshine vitamin」とも呼ばれる。植物の遺伝子を精密に改変した結果、このトマトは卵2個分に相当するビタミンDを含有し、紫外線照射によりさらに含有量が増加する。この手法は持続可能で入手しやすい解決策を提供する。

植物

  • アルゼンチン、遺伝子組換えダイズDBN8205を承認
  • 米国農務省動植物検疫局(USDA APHIS)が遺伝子組換え害虫抵抗性トウモロコシの規制解除
  • バングラデシュの農家がBtナスで収量と収益を向上
  • 低リン土壌で作物の生育を促進する可能性のあるダイズ遺伝子を特定
  • 北方系野生イネの完全ゲノム解読がその潜在的可能性を明らかにした
  • Cornell Universityの学生が色が変わるトマトを開発
  • ROTHAMSTED RESEARCHの科学者がコムギの草丈と粒径の重要制御遺伝子を特定
  • HEIDELBERG UNIVERSITYの研究者が植物の旱魃下での生存メカニズムを発見
  • 旱魃に強いアルファルファがカザフ農家に命綱を提供
  • オーストラリア、遺伝子組換えワタの商業栽培を承認
  • 米国産遺伝子組換え作物輸入がインドネシアの食料自給率に与える影響が明らかになった
  • ゲノム編集インディカ米が BASMATI 米の香りを発現
  • Iowa State Universityの科学者がゲノム編集技術を用いてAgrobacterium tumefaci ens,の染色体を解明
  • コムギの生産量を3倍に増やす可能性のある遺伝子を発見
  • CRISPR技術を用いたイネが広域除草剤耐性を示した

食糧

  • John Innes Centre と Quadram Instituteがゲノム編集トマトの食品試験を実施へ
  • 調査で明らかになった韓国におけるゲノム編集食品の受容拡大

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