[転載] 政府が禁じた科学技術に基づいた農業の技術は、干ばつの被害を軽減する

海外のWEBメディアには、バイテク農業に関する優れた記事がたくさん掲載されていますが、日本国内のメディアはこうした内容の記事を忌避するため、我々には届きにくいのが現状です。そこで日本バイオ作物ネットワーク(JBCN)では、著者や掲載元から許可をとり、日本語に訳して当サイトに転載します。記事一覧はこちら。今回は、Global Farmer NetworkからMarco Aurelio Pastiの記事を転載してお送りします。ありがとう、Marco!

元記事
Global Farmer Network
Science-based Agriculture Technology Can Reduce the Harmful Impacts of Drought

ヨーロッパはレオナルド・ダ・ヴィンチが亡くなって以来の(それは500年以上も前の話だ!)最悪の干ばつに見舞われていると、欧州委員会の世界干ばつ観測所は主張する。

確かに、2022年の夏は熱波と水不足によって非常に厳しいものとなった。 イタリア北部を流れる国内最長のポー川もついに干上がってしまったほどだ。

ヴェネツィア近郊にある私の農場も例外ではなく、4月末から8月中旬まで全く雨が降ることはなかった。そして、非常に暑かった。

そのせいで、今季の栽培は何かとんでもないことが起きない限り、非常に困難になるだろう。 そして、政府が、干ばつの最も有害な影響を軽減する基本的な技術へのアクセスを農家に禁じたことで、私たちはさらなる困難に直面することになった。

私たちはトウモロコシ、大豆、小麦、大麦、てん菜のほか、ワイン用ブドウやクルミなど、さまざまな作物を栽培している。 肉牛の飼育も行っているし、発電のためのバイオガスプラントも併設している。

今年の干ばつは、私たちのトウモロコシと大豆に特に大きな被害を与えた。

私たちが依存している灌漑のシステムは、極度に乾燥した状況下での使用は想定されていない。 私たちの土地は非常に平坦で、地下水面が浅い。そのため灌漑によってほ場に送水するのだが、稼働させるためには少なくとも1インチの降雨が必要となる。その条件を満たせば、若い植物が根を深く伸ばし、側方施肥された窒素を取り込むのに役立つ。しかし、 雨不足と猛暑によって土壌は非常に硬くなり、若い植物の根が成長できなかった。恐ろしいことに、これが夏の間ずっと続いたのだ。

その後、さらなる打撃が私たちを襲った。私たち農家が恐れるAspergillus flavus(アスペルギルス・フラバス)という名の真菌が、トウモロコシに感染したのだ。この真菌は非常に危険な物質アフラトキシン*を生成すること、湿度や温度の管理が不十分な保管場所で発生する可能性が高いことを知らない農家はいない。

*天然物の中で最も強い発がん物質であるアフラトキシンB1(JBCN追記)

作物が暑さや干ばつによるストレスを受けると、この菌がほ場定着する可能性がある。 2022年の状況は真菌の発生に最適だったと言えるが、これは私たちに大きな打撃を与えることとなった。

ヨーロッパトウモロコシ穿孔虫(European Corn Borer)の幼虫はトウモロコシを好んで食べる。そして菌類が最も被害を与えるのは、彼らがをむしゃむしゃと食べた痕だ。そこに通り道ができ、病気が広がりやすくなるからだ。

ここに良いニュースと悪いニュースがある。

良いニュースは、科学者たちがこの害虫からトウモロコシを守る方法を知っていることだ。 科学者たちはヨーロッパのトウモロコシ穿孔虫に抵抗する、さまざまなGMトウモロコシ、Btトウモロコシを作り出してきた。そして世界中の農家が、一世代以上にわたってこれを使用し、成功している。

悪いほうのニュースを伝えよう。

我がイタリアの規制当局は、2015年にこの遺伝子組み換え作物の栽培を禁止した。つまり私は、イタリアでこの遺伝子組み換え作物を栽培することを許可されていないということだ。近隣の国 — スペインやポルトガルなど — の私の仲間の農家の多くは、これらを害虫の攻撃から作物を守るごく一般的な選択肢だと考えているというのに、だ。

遺伝子組み換えトウモロコシとは対照的に、私のトウモロコシはヨーロッパトウモロコシ穿孔虫に対する防御力をほとんど持たない。農家は長年の経験から、この害虫の被害がトウモロコシの収量を3割、最大で6割も減らすことを知っている。もちろん殺虫剤は被害を抑えるのに役立つが、効果的に使用するには、常に適切なタイミングで、高いクリアランスを持った特別なトラクターで散布する必要がある。追加の費用が必要になることも多い。7月は気温が高く、植物や昆虫の代謝が非常に早いため、数日の作業の遅れが防除の効果を大きく左右することも農家の頭痛のタネだ。

現在の最良の解決策 — 自然に害虫を忌避する遺伝子組み換えトウモロコシ — は、安全性が実証済みの技術だ。 Btトウモロコシには、アフラトキシンその他の真菌性由来の病気によってトウモロコシが汚染されるリスクを下げる効果もある。つまりこれは — 時に遺伝子組み換え作物が過激で危険なものとして描かれているのとは対照的に — 実際には食品の安全性の鍵であることを意味する。

遺伝子組み換え作物は、環境にも優しい。

まず、旧来の品種をヨーロッパのトウモロコシ穿孔虫の被害から守るには、殺虫剤を散布する必要がある。

そして、殺虫剤を使用したとしても、生産量がいくらか失われることになるから、農家は同じ量のトウモロコシを生産するために、より多くの面積で栽培しなければならない。そうすることでより多くのエネルギー、肥料、農薬、水を使用することになる。 アドリア海沿岸近くに位置する私の農場は、海抜から1.5メートル以上低く、それを不安に感じているにも関わらず、一方で私は温室効果ガスを必要以上に多く放出している。私自身が気候変動の一因となっているわけだ。

今日、イタリアやヨーロッパのほとんどの地域では、政策立案者が、科学者のアドバイスよりもイデオロギー活動家の警戒心を重視している。だから、ヨーロッパで500年ぶりの干ばつが到来したとき(まさに今だが)、私たちは重要なイノベーションを利用して被害を軽減することができなかった。ヨーロッパでは事実に基づいた科学よりも、イデオロギーが優勢だ。だから私たち農家は、遺伝子組み換え作物や作物保護製品のリストを利用できない。

解決策は1つしかない。

私たちは科学に立ち戻るべきだ。急激に変化する気候条件下にあって80億人に栄養を与えるという挑戦を成功させるためには、事実に基づいた決定こそが必要なのだと、全ての人が理解する必要がある。


マルコ・アウレリオ・パスティ Marco Aurelio Pasti
マルコはイタリア北東部、アドリア海沿岸でトウモロコシ、大豆、小麦、大麦、てん菜、ワイン用ブドウ、クルミなどを生産する農家。 彼の農場は、数頭の肉牛に餌を与え、電力を生成するバイオガスプラントも備えている。保全耕作の専門知識を有する。イタリアトウモロコシ栽培者協会の元会長。